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ふと、となりにある魔法の時間へ [本のこと]

   あの時からすでに、魔法にかかっていたのかも、知れません。

   昨日の朝は、目が覚めて、頭の中がとても冴え冴えとしておりました。

   なんとも不思議な空気が、自分の周りを覆っていて。

   空は晴れていて、すずめがピチピチとさえずっておりました。

   何一つ、いつもと変わらないように見えた、昨日のことです。

 

   わたしは、お昼過ぎに家を出ました。

   本当は、かなり遅れている研究を、進めるつもりだったのです。

   いつものように自転車に乗って、いつもの通学路の風を切っておりました。

   そこで、ふと、思いついたのです。

   「いつもとは、別の道を進んでみよう」と。

   いつもなら、20分程度の大学への道。

   でも、昨日は、その道を通らずに、回り道、

   それも、できるだけ、通らない道を選択しました。

   この街の道路は、区画整備されているようで、一方でとても複雑怪奇なのです。

   ひとたび曲がってしまえば、自分がまったく知らない世界が広がっています。

   したがって、「いつもの道」ではないところを通ると、発見がいっぱい転がっているのです。

   いつもとは違う道。

   その途中にあった喫茶店で、わたしは、ランチをテイクアウトしました。

   いつもはコンビニや大学生協で購入しているランチも、

   こうして、たとえチェーン店であっても、喫茶店で購入する、というのはなんとも新鮮でした。

   いつもより、ちょっと高めのランチ。

   あとあとに響くなぁと思いましたが、でも、なんだか冒険をしているようでワクワクしてきました。

   それからしばらく、自転車には乗らず、徒歩で、先に進みました。

   それも、できるだけ、通らない道を選んで。

   そうすると、たとえばいつもは日陰の道を通っていても、

   昨日通った道では同じ時間に燦燦と陽の光が降り注いでいたり、

   たとえばいつもは風の強い道を通っていても、その風が頬に心地よかったり…。

   すでに、なんとなく、非日常でした。

   でも、そこでおしまい。

   その途中から大学へは、またいつもと同じ道。

   それでも、まだ、魔法は続いていたのです。

   研究室について、ランチを堪能し、研究をすすめて。

   わたしは、どうしてもかばんの中身が気になって仕方がありませんでした。

   昨日のかばんの中には、昨年末に購入した、1冊の本が入っていたのです。

   タイトルは、『春の窓 安房直子ファンタジスタ』。

   カフェで読もうと思い、お店が閉まっていたため、帰宅後にデスクに置いたままの本でした。

   昨日の朝、体を起こして、ふと、デスクの上の、この本が輝いて見えました。

   「ねぇ、私を読んでごらんなさいよ」

   そう言っているかのようでした。

   言われるがままに、わたしはこの本をかばんに入れ、大学まで連れてきたのです。

   そして、1ページ1ページ、

   

   声に出して読んでいきました。

   とても優しい文章で、でも、しっかりと世界がそこにあって。

   包みこまれるような、それでいて、しっかりと支えてくれているような、

   そんな感覚が、わたしのすぐ隣にありました。

   

   紡ぎ出される文章の1つ1つが織りなす世界の中に、わたしはおりました。

   傍らで、その物語を見つめているような気がして、

   1つの物語の最後まで読んで、ほっとしておりました。

   時に涙し、時に笑顔になりました。

   あぁ… わたしが求めていたものだ。

   そう、思いました。

   そうして、いろんなことを、考えました。

   考えることができました。

 

   研究室で、1人であることを確認し、声を出して読み始めたとき。

 

   わたしの夢は、言葉を知りたいと思ったことだと、思い出しました。

 

   そして、こうして、子供たちに本を読み聞かせたいと思い、

   司書を目指したことを思い出しました。

 

   この口から、言葉を編むことが好きで、

 

   そうして笑顔を観ることが、なによりの幸せだと、あらためて、思い知りました。

 

   今いる場所も、言葉を知りたいと思い、希望して入ったことを、思い出しました。

 

   自分の夢の原点を、再確認いたしました。

 

  

   そうして、

 

   主人公が伴侶を迎えた時。

 

   主人公が素敵な夢を見た時。

 

   主人公が悲しい思いに苛まれた時。

 

   ともに笑い、ともに泣きました。

 

   それが、自然にできました。

 

   

 

 

   ここ数日、ずっと、「何か」を求めておりました。

   自分の中からぽっかりと抜けた「何か」。

 

   それが、見つかったような気がしました。

 

   枯れたと思いかけていた泉に、ふと、湧き出でるかのようにして、

 

   わたしの中を、やわらかい風と共に、言葉が優しく、流れていきました。

 

   帰宅の際も、いつもと違う道を通ったのは、言うまでもありません。

 

   昨日1日は、なんとも不思議な1日でした。

 

   朝目覚めて、この本を見つめた時から、すでに、魔法にかかっていたのかもしれません。

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫―ホワイトハート)

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫―ホワイトハート)

  • 作者: 安房 直子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/04
  • メディア: 文庫


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ゆうみ

声を出して文章を読むと韻がはっきり感じられて良いと
教えられた覚えがあります。
日常の中の非日常 それは小さな冒険で素敵な事ですよね。
by ゆうみ (2009-01-25 10:42) 

sion

とてもすてきな、きれいな文章でした。
「魔法にかかっていたのかも … 」なんてすてきなんでしょう(o→ܫ←o)

「ほんとにこれでいいんだっけ?」
ときどき立ち止まって、
後ろを振り返ったり、
足元を見つめたり、
そんなことをしている自分を思い出しました。
なんてことでしょう … 。
すっかりゆとりを忘れている自分がそこにいました。

こんど、ゆっくり、いつもとは違う道を歩いてみよう … そんなふうにおもいました(。^ ^。)
by sion (2009-01-25 14:27) 

お兄ちゃん

魔法にかかったもにょちか^^
ちょっとした回り道も時には新鮮だね♪
でも夜は明るい道通ってお帰り^^
by お兄ちゃん (2009-01-25 20:49) 

もにょち

>ゆうみさん
nice!&コメント、ありがとうございます☆彡
おっしゃる通り、まさに「日常の中の非日常」でした。
ふと、交差点を曲がり間違えるだけで、
こんな風に違った世界が広がってるんですね。
固定観念にとらわれずに、生きてみたいと思った瞬間でした。
by もにょち (2009-01-25 22:49) 

もにょち

>sionさん
nice!&コメント、ありがとうございます☆彡
「すてき」という言葉、「きれい」という言葉。
“もにょち”が書く文章にとって、最上級の褒め言葉です!!
ありがとうございますッ!!(*>▽<*)

ふっとした時間、だと思うんです。
まったく知らない時間がそこにはあって、
余裕がないはずなのに、ふと入りこんでみる。
それが実は、とっても、かなり大切だったりするんだな、と思いました。
見つけたいですね、そういう時間、日々の中で(^ω^)
by もにょち (2009-01-25 22:53) 

もにょち

>ぴーすけ君さん
nice!ありがとうございます☆彡
by もにょち (2009-01-25 22:54) 

もにょち

>お兄ちゃんさん
nice!&コメント、ありがとうございます☆彡
なんだかちょっと、お姫様みたい?なんちゃって(´m`)プププ
知っている道のはずなのに、久々に、
それも組み合わせを変えて通ることで、
こんなにも発見があるんだと知りました(*^▽^*)
面白いですね♪
帰宅時には、あまりフラフラしないように気をつけました(^ω^;)
by もにょち (2009-01-25 22:57) 

へろーめ

よかったね
言い古された言葉だけど
「一期一会」

すべての出会いは必然なのだ

by へろーめ (2009-01-26 16:39) 

もにょち

>へろーめさん
nice!&コメント、ありがとうございます☆彡
「一期一会」、とっても好きな言葉です(´∀`)
自分に起こる出来事が必然である、ということ、とても実感しています。
偶然なんかじゃない。そう思います。
なので、今回の出会いも、とても感動しました。
嬉しかったです(^ω^)

by もにょち (2009-01-26 22:42) 

もにょち

>都素路メアリさん
nice!ありがとうございます☆彡
by もにょち (2009-01-26 22:43) 

もにょち

>hideKING666さん
nice!ありがとうございます☆彡
by もにょち (2009-01-26 22:43) 

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